英語の弱形って何?「him」が「イム」に聞こえる理由と聞き取りのコツ

リスニングが苦手な生徒さんの多くが、その理由を「英語が速すぎて聞き取れない」と言いますが、本当の原因は速さじゃないことが多いんです。実際に、速度を落としてゆっくり聞いてもらってみると「あれ…ゆっくりでも聞こえない」となることが多々あります。

スクリプトと突き合わせてもう一度聞いてみて気づくのは「先生、himって『ヒム』じゃないんですか?なんか『イム』って聞こえるんですけど…」ということ。

大丈夫、そう聞こえるあなたの耳は正しい。ちゃんと聞こえてます。問題は、学校で習った発音と実際の発音が違うことなんです。

「弱形」=大事じゃない単語は弱く発音される

学校ではあまり習わないのですが、英語には「強形」と「弱形」という2種類の発音があります。簡単に言うと、文の中で重要な単語ははっきり発音され、重要じゃない単語は弱く・短く発音されるというルールです。

例えば「I saw him yesterday.」という文は、日本語に訳すと「私は昨日彼を見た」ですよね。この文で一番伝えたい情報は何でしょう?

そう、「昨日」と「見た」です。「彼を」の部分は、会話の流れでお互いわかっていることが多いですよね?だからそんな重要じゃないhimは弱く発音していいやってなった結果、hの音が落ちてimだけ読まれる、というのが実際の会話では起きるんです。

弱形になりやすい単語を覚えておこう

じゃあ、重要じゃない単語は弱形で読めばいいんだね、となりがちですが、全部の単語に弱形があるわけではありません。弱形になるのは「機能語」と呼ばれる文法的な役割を持つ単語だけです。

代表的なものを表にまとめました。これだけ覚えておけば、リスニングテストで困ることはないはず!です。

単語 強形(辞書の発音) 弱形(実際によく聞く音)
him ヒム /hɪm/ イム /ɪm/
her ハー /hɜːr/ アー /ər/
them ゼム /ðem/ ザム・ əm /ðəm/, /əm/
and アンド /ænd/ アン・ン /ən/, /n/
to トゥー /tuː/ タ・トゥ /tə/, /tʊ/
for フォー /fɔːr/ ファ /fər/
can キャン /kæn/ カン・クン /kən/

余談ですがhimやherの「h」が消えるのは、英語の歴史的にも古くからある現象なんです。シェイクスピアの時代からあったとか。だから「発音が雑になった」わけじゃなくて、これが本来の自然な英語なんですよね。

私が授業で教えている「聞き取りのコツ」

私がいつも教えている生徒さんたちからは、「弱形について学んだのに、実際のリスニングで聞き取れない」と言われることもあります。これは、知識と実践は別物だからなんです。やっぱりカタカナで書いた日本語と、ネイティブが言う英語は違うので練習が必要です。

私はいつもこんな練習法を紹介しています。

①まず「強形」で文を読む
最初は教科書通りの発音で音読します。I saw him yesterday.を「アイ・ソー・ヒム・イエスタデイ」とはっきり読む。

②次に「弱形」を意識して読む
今度は「アイソーイム・イエスタデイ」と、himを弱く短く。sawとhimがくっつくような感覚で。

③最後にネイティブ音声と比較
YouTubeでもドラマでも、何でもいいので、同じ文をネイティブがどう発音しているか確認する。「あ、本当にイムって言ってる!」と実感できれば、もう聞き取れます。

例文で練習してみよう

練習するののいお勧めの例文はこちら。赤字が弱形になる部分です。

例文1: Tell him to come here.
→ 「テリム・トゥ・カムヒア」のように聞こえる
例文2: I want to go to the park.
→ toは「タ」や「トゥ」に。「アイワナゴー・タ・ザパーク」
例文3: Give it to her.
→ herの「h」が消えて「ギヴィットゥ・アー」
例文4: Can you help them?
→ 「クンニュー・ヘルプ・ザム」のように聞こえる

「Give it to her.が『ギヴィトゥアー』にしか聞こえなくて、何を言ってるかわからなかった」と言っていた生徒さんも、弱形を知り、練習した後にもう一度聞いたら、「あ、ちゃんとherって言ってる!」と驚いてましたね。知識があるだけで、聞こえ方が変わるんです。

テスト・入試ではここが狙われる!

私のこれまで見てきた中では、一番出やすいのは「can」と「can’t」の聞き分けです。

なぜかというと、canは弱形で「クン」のように弱く発音されるのに対し、can’tは強くはっきり発音されるから。つまり、「弱く聞こえたらcan」「強く聞こえたらcan’t」という判断ができるんです。

「え、tの音で判断するんじゃないの?」と思うかもしれませんが、実際の会話ではcan’tのtはほとんど聞こえないことが多い。だから強弱で判断するのが一番確実なんです。

大学入学共通テストのリスニングでも、「代名詞の聞き取り」を問う問題が出されました。himなのかherなのか、themなのか。これも弱形を知っていれば対応できます。

日本語でも「洗濯機」のことを「せんたっき」って言いますよね

リスニングが苦手な生徒さんは「耳が悪い」のではなく「知識が足りない」だけだと感じています。弱形を知らなければ、どれだけ練習しても「ヒム」を待ち続けて「イム」を聞き逃すことになる。逆に言えば、知識さえあれば一気に聞き取れるようになるんです。

そういうと、「例外があるなんて、英語難しすぎる!」という生徒さんが多いですが、日本語だって同じ。知らないうちに、実はたくさん省略してるんです。どんな言語もそういうものだと、まとめを読んで復習です。

・英語には強形と弱形という2種類の発音がある
・him、her、them、to、for、canなどの機能語は文中で弱く短く発音されることが多い
・リスニング対策としては、まず弱形の存在を知り、実際の音声で確認する練習が効果的
・テストでは特にcanとcan’tの聞き分けが頻出なので、強弱で判断するコツを覚えておく

精神論になりますが、「聞き取れないんじゃないか」という不安も、聞き取りづらくさせる要因だと感じています。この記事を読んで練習しておけば、絶対に大丈夫!自信を持って挑んでください。